日本経済は「失われた」「ゼロ成長」の20年間とよく呼ばれるが、実はこの間に8倍もの高度成長を
達成した巨大セクターが日本経済にはある。
国債発行である。1990年度は21兆円だったものが2010年度は162兆円に増え、国内総生産(GDP)の34%にも達した。
しかし、不思議なことに世間に流布している国債発行額は2010年度で44兆円しかないのである。それは世間で言う国債発行額は新規財源債」という種類の国債に限っているためだ。
それ以外の、既存の国債の償還のために発行する「借換債」の103兆円や特殊法人や自治体に貸し付けるための「財投債」の15兆円は、政府が発表しマスコミが伝える「国債発行」には含まれていない。
しかし、これら3種類の国債の違いは資金使途の違いに過ぎず、投資家から見たら全く同じものだ。
このような情報開示は、企業会計ならば考えられない。もし、上場企業が、社債の借り換えや子会社への貸し付けのために発行する社債を財務諸表に記載しなければ、経営者は刑事罰に問われてしまう。
ところが、国は、発行総額の4分1程度しか「国債発行」と呼ばず、マスコミはそのまま報道するから、日本国民は国債発行の本当の大きさを知らない。
これでは「借金隠し」「大本営発表」のそしりを免れないのではないか。