その象徴がシティグループです。ジョン・リード会長時代の90年代の初めに約3000億円の損失を計上し、経営危機が囁かれました。その時、サウジアラビアのアルワリード王子が約700億円分の優先株を購入してようやく危機を脱しました。
去年、シティはサブプライム問題で最大で約2兆円にも上る巨額損失の計上を発表しました。チャールズ・プリンスCEO(最高経営責任者)は辞任し後任がなかなか決まりませんでした。ところがその時、アラブ首長国連邦のアブダビ投資庁が約8100億円を出資し、シティは自己資本を充実することができました。15年前とは比較にならない金額を、米国のトップ金融機関は、海外から調達できることを見せつけました。
もう1つは、金融機関が担保に取る不動産市場の下落が米国に限られ、世界に広がる気配がないことです。特に、アジアや中東での旺盛な不動産開発や投資は抑制が難しいほどです。90年代初めのように、世界同時の不動産下落は起きていないのです。