ところが、こうした世界の成長に大きく取り残されているのが日本です。21世紀のGDP(国内総生産)はほとんどゼロ成長であり、株式指数はマイナスを記録しています。1980年代終わりには世界の株式市場の時価総額の4割を占めていた日本のシェアは、今わずか7%に過ぎません。年金や個人資産の伸びも止まっていることになります。
今年は、こうした現実に気づいた日本の資産が海外への投資に向かい、大きな円安になる年かもしれません。日本の低迷の根本的な原因は、いまの日本の経済モデルが新しい世界に適合していないことなのです。
よく日本の低成長は少子高齢化が原因、と言われますがそんな単純なものではありません。韓国や台湾、シンガポールなどの先進国や中国を含めてアジア全体で少子高齢化が進んでいるのに、日本だけが大きく経済成長が止まっているのには、もっと根本的な原因があります。
このままでは、日本経済の地盤沈下はいっそう加速するでしょう。かつて日本に消費財の製造業で敗れた米国や欧州は、80年代以降苦労しながら日本への敗北から学びました。そのうえで、既存の工業社会に頼らずに成長するために、産業構造と国土の転換を成し遂げました。
米国では、企業のローカル化とグローバル化の同時進行でした。ニューヨーク以外から新しい世界企業が次々に生まれるようになったのです。そのために、減税と航空、金融、通信のビッグバンを行い、地方からでも世界とビジネスができる経済をつくりました。
欧州はEU(欧州連合)の統合という大事業を成し遂げました。そのうえで、文化を生かし、田園を中心とした農業、観光、伝統、環境をミックスした新しい経済をつくり上げ、さらに企業もグローバル化しました。新しい欧州の強さがユーロの強さに表れています。