くにうみの先見

物価上昇率の低さは70年代後半~80年代初めとは決定的に異なる点

1980年代までと決定的に違うのは、日本以外の21世紀の世界は、インフレなき経済成長を長期にわたって続けることです。と言うと何をバカなことを言うんだ、ガソリンも食料も上がっているじゃないか、米国発の世界不況が来るぞ、グリーンスパン前議長もインフレと不景気が一緒に来るスタグフレーションが始まったと言っているぞ、という声が聞こえてきそうです。

確かに、原油の値段は99年の1バレル10ドル近辺から昨年末には100ドル近くにまで上昇しました。実に10倍です。ところが、それにもかかわらず、日本の物価上昇率はほとんどゼロ、上昇傾向の米国でも3%、ひどいインフレと言われる中国でも6%程度、あのブラジルでも5%以下なのです。石油ショックの翌年の74年には日本では物価上昇率が23%になり、米国では10%以上の物価上昇が続いた70年代後半~80年代初めとは比較にならない低さです。

むしろ、原油価格が10倍になっても物価全体が跳ね上がらないところに、21世紀の世界経済が、強い物価下落圧力の下にあることを浮き彫りにしています。

その最大の原因が、工場での大規模な生産現場はもちろん、ソフトウエアの開発や会計事務や証券分析やコールセンターなどのオフィスでの仕事までも、従来の先進国での仕事が中国やインドやベトナムなどのコストの低い良質の労働力が動員可能な所に移っているからです。それに伴い、工場やオフィスなどの不動産の立地もコストの低い国や地域に移ります。

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